テレビの音が聞こえにくい、会話での聞き返しが増えてきた…。
そんなお悩みに気軽に対応できる、とっておきのアイテムが誕生しました。
お客様が日常で使いやすいよう、若手開発者のこだわりを詰め込んでいます。

手軽でラクで、顔周りになじむ商品に

『きこえるホン』は「耳に入れない」画期的な集音器です。 えっ、どういうこと?と思われた読者の方も多いことでしょう。
2020年に先輩から引き継ぎ、新たな担当者となった若手社員・Yも最初の感想は同じでした。

『きこえるホン』は、大ヒットしたテレビ用スピーカー「みみもとくん」シリーズを手がけているエムケー精工とココチモが合同で開発した商品です。そもそも開発のきっかけは、今からおよそ10年前、多くの方々からエムケー精工の開発者に寄せられた声でした。

「イヤホンを耳に入れるのがわずらわしい」「耳穴に入れるのが不快だから、集音器はつけたくない」「機械の大きさが耳に合わない」…
昔も今も、集音器などの聴覚補助具は耳に入れるタイプが主流です。
しかしこの「きこえるホン」では従来の「耳の中で音を鳴らす」発想から離れ、「小型の高性能スピーカーをできるだけ耳の近くに持ってくる」というアイデアで新たな設計に取り組みました。

その中で、この新構造により“耳介”(下図参照)の本来の力が活かされ、より自然に、クリアに聞こえることが実証されたのです。
この構造は、エムケー精工の中島照正氏が持つ特許技術を応用しています。

Yはその全容を初めて知った時、衝撃を受けたと言います。
「耳に入れない方がよく聞こえることがあるなんて、人間の身体ってなんて神秘に満ちているんだ、と思いました」。
それまで耳のことを詳しく知らなかったYですが、何冊もの本や聞こえに関係する論文、そしてお客様からのお便りを読みあさるようになりました。


開発者のエムケー精工の中島氏(画面右)と何度もミーティングを重ねた。

「私が担当を任された時点で、だいたいの形はできあがっていたんです。けれども、本当にお客様に使いやすい性能や形状になっているか、あらためて細部まで確認しました。聞こえのクリアさは十分だったんですが、最初のモデルは重すぎるのではと感じて…」。

Yが大切にしたのは、お客様が毎日ストレスなく装着できることです。耳に入れないストレスは軽減されたとしても、その重量が負担になってはいけないと考えました。
軽ければ軽いほどよい、そんなYの意見により、エムケー精工も軽量化に必死になりました。
試行錯誤の結果、初期モデルから現在の形になるまでに約35%も重量を低減することに成功したのです。

さらに顔まわりに装着する商品なので、髪や肌の色に合う色味にこだわりました。
特に、耳の横に来る部品の色をゴールドにするかシルバーにするか、さまざまな意見がありましたが、肌になじみやすいという理由でゴールドに決定しました。

大事な話を聞き逃さないだけでなく、ふとした日常の音にも癒やされる

最近は誰もがマスクをしているため、会話が聞き取りづらい場面が増えてきました。
『きこえるホン』は必要なときだけ、サッと取り出して着けるという使い方も便利です。Yは、性能はもちろん、特に「メガネのように折りたためる」点も大きな魅力だと話します。
「たとえば病院で診察時に先生のお話を聞くときだけサッと着けて、話が終わったらすぐ鞄にしまうという使い方ができます。そして何より、聞こえが気になったら、何らかの道具を活用することを気軽に考えてほしいんです」。

聞こえないことに慣れてしまうよりも、それこそメガネのように気軽に使えれば、日常はもっとラクに楽しくなるでしょう。Yの祖母は80代ですが、もし聞こえにくいという話が出たら真っ先に「きこえるホン」を勧めたいと思っています。


「伸縮アームの長さや動きやすさにこだわった」と開発当初より関わっている先輩社員。

完成した『きこえるホン』をお試しいただいた方から、「風で木の葉がふれ合う音や、鳥のさえずりが聞こえた」という感想をいただきました。また「使ってみたら別世界だった」とのお声も。

これらを聞き、Yは大学時代の部活での経験を思い出しました。
「友人に誘われて、山々を縦走する『ワンダーフォーゲル部』に入部していました。女性でも24kgぐらいのリュックを背負って、1週間ほど山にこもることが主な活動です。
山は電波が届かず、スマートフォンを使えないなど不便もありました。でも、静かな山の中だからこそ聞こえる、草木を渡る風の音や優しいせせらぎの音に感動した経験があります。
もしかしたら、それに似た感動が、『きこえるホン』でも味わえるのかなって…」。

使ってみるまで気づかない、そんな豊かな音の世界があるかもしれません。
「お客様に『きこえるホン』をお試しいただき、ふだんは気づかない音までが聞こえる体験をしていただけるとうれしいです」。


静かな山の中でしか聞こえない小さな音に気づいたとき、 「聞こえる」ことの大切さを知ったと話すY。

※記事の内容、写真は取材当時(2022年)のものです。
※担当者の名前はイニシャルを使用しています。