立体地図座談会立体地図ってやっぱり面白い

特別座談会日本立体地図制作担当vs地図神今尾市のフリートーク立体地図ってやっぱり面白い

  • 地図データ制作担当 篠崎 透
  • 推薦者 今尾恵介
  • 成型担当 大道寺 覚

京都、いいですね。扇状地の感じがよく出ています

この度いよいよココチモより刊行の運びとなった『日本立体大地図』。刊行にあたって今回は、地図愛好家として著名な今尾恵介氏をお迎えし、成型担当の大道寺覚氏、地図データ担当の篠崎透氏とともに、今回の地図制作にまつわる話や、立体地図の魅力についてフリートーク形式で存分に語っていただきました!

座談会に参加していただいたお三方

  • 推薦者 今尾恵介
    推薦者
    今尾恵介(いまお・けいすけ)

    地図愛好家の間では”地図神”とも呼ばれる地図研究家。『地図マニア 空想の旅』をはじめ著書多数。

  • 地図データ制作担当 篠崎 透
    地図データ制作担当
    篠崎 透(しのざき・とおる)

    株式会社地理情報開発。『日本立体大地図』では地図データの制作と鑑賞ガイド編集を担当。

  • 成型担当 大道寺 覚
    成型担当
    大道寺 覚(だいどうじ・かく)

    株式会社ニシムラ精密地形模型。『日本立体大地図』では立体地図の成型・製作を担当。

地図データ制作担当 篠崎 透国土地理院のデータをもとに、細かい地形が立体化されている(篠崎氏)

日本立体地図

ココチモから刊行された『日本立体大地図』。全国から10のエリアが選ばれ、それぞれデジタルの地形データから精密に立体化された。

私は学生時代に初めて航空写真を見て、地形が浮き出てたときの感動が忘れられないんですけれども、立体地図はその感覚を手軽に楽しめる魅力がありますね。皆さんにとって立体地図と一般の地図の違いはどんなところですか?

ずばり地形そのものが見えることですね。一般的な地形図では等高線で地形が表現されてますが、等高線を見て頭の中でその地形をイメージできる人は少ないと思いますので。

今尾さんは小学校のころ等高線の落書きから始めた人ですから(笑)。普通の人はなかなか等高線から地形はイメージはできないです。でも実はそういう普通の人ではない、等高線が読める専門家の方こそ、「(立体地図だと)地形が目で見えるから、新しく気づくことがある」とおっしゃいますね。

こういう立体地図というものが作れるようになった、一番の要因って何でしょう?

やはり国が無料でデータを公開するようになったことですね。国土地理院さんのは精度がいいですし、作りやすくなりました。昔は購入しなきゃいけなかったので、これだけ作ったらデータ代だけで大変な金額になっていたはずです。

時代が変わって作りやすくなりましたね。そこで、これは前から聞いてみたかったんですが、立体地図とジオラマって、どう違うんでしょうか?

ジオラマの場合は地図というよりは模型や造形というイメージが強いですね。動かせないものも多いです。それに対して立体地図は、自由に手にとって眺められます。また、精密な地形データを基につくっているので、ジオラマに比べて「地図」としての機能がしっかりしています。

立体地図の場合、すべてが国土地理院の正確なデータから数学的な処理がされていて、細かい地形が表現されている。そこが、この立体地図の一番良いところなんじゃないかな、と思うんです。

すべてデジタルの精度ですから。海の場合は日本水路協会さんのデータを使ってますし、ぜんぶ座標値がありますので、バシッと構成できてるんですね。

これ、海底地形がそうとう詳しく出てるっていうのは画期的だと思うんです。今までこれほど細かい海底地形が可視化されることって、あまりなかったんじゃないですか?

そうですね、CGはありましたけれど、CGだと意外と分かりにくいんですよ。

たとえば東京湾の底が「え、こんなになってるの?」っていうのは、普通の地図では絶対分からないですからね。

海底地形っていうことでいうと、駿河トラフの海の底から富士山頂までの標高差って8,000メートル以上……1万メートルですか、それくらいあると思うんですけれど、ここも立体地図で見ると凄いインパクトですね。

日本立体地図

駿河湾の中央部をほぼ南北にのびる駿河トラフ。本製品では陸地だけではなく、海底の地形まで精密に立体化されている。

推薦者 今尾恵介京都の都が、いかに絶妙な場所に作られているか実感できる(今尾氏)

日本立体地図

【京都俯瞰】三方を山に囲まれた盆地に位置する京都の都。

これは今日ぜひ訊きたかったんですが、今回ピックアップした10カ所の中だと、今尾さんはどこにいちばん興味をお持ちですか?

京都が面白いですよね。扇状地の感じが本当に凄くよく出ています。

私も初めてこうやって京都の地形を全体で俯瞰して気付いたんですが、五山の送り火ってずいぶん低いところでやってるんですね。どこからでも見えるように高いところでやってるんだと思ってたら、この辺の尾根筋の低いところでやっている。

直近の山ですよね、送り火は。あと立体地図を見てると、京都の都が風水を考えて作られてるっていうのが分かりますね。北に山を背負って南が水でっていう。で、ここに都を置く、と。三方山に囲まれてるから防衛的にもいい、そういう絶妙な場所に作られてるのが実感できますよね。

それと、琵琶湖と京都駅では標高で50メートル以上差があるんですが、よく見るとそれも分かります。

言われてみると、確かに高低差がありますね。

そうすると、琵琶湖から疎水で水を引く、という感覚が実感として非常によく分かるんですよ。

そう! 琵琶湖が実は高い位置にあって、「なるほど、これだったら水を引ける」っていうのがね。

あとこの辺を見ていると、東北の方角から京都に入るのに逢坂の関を通るっていうのが「なるほど」ってよく分かりますね。いちばん低いところを通ってる。

あ、本当ですね!

東海道線も昔のルートって南を通ってましたからね。この立体地図で地形を見ていると、本当に色んなことが分かってきますね。

成型担当 大道寺 覚中央構造線を境に、文化圏が変わるのが分かる(大道寺氏)

日本立体地図

瀬戸内エリアの立体地図を前に盛り上がる、”地図大好き”な三人。

瀬戸内もいいです。非常に起伏が激しい四国山地と、なだらかな中国山地の対比がよく出ていて。それでこの中央構造線の真っ直ぐのラインね。誰が見てもはっきり分かるっていう。

中央構造線は瀬戸内の目玉ですね! それでこう、この中央構造線を境に、こっちからこっちで文化が分かれる感じが……。

もう、はっきりと違いますね。

山が高いとそこで文化圏が切れるんですね。言葉もそうですし、商圏とか交通圏とか。徳島と高知なんかは、最近選挙区が一緒になりましたけれど、文化的にはへだたりがある。

本当に山が人と文化の行き来を妨げていたっていうのが、これだと見た目で分かりますよね。

……こうやって眺めながらワイワイ話せるのがいいですね、立体地図って。

──お話は尽きませんが、最後に立体地図の購入を検討している方にメッセージがありましたらお願いします。

「自然の造形がこんなに美しいのか」っていうのを感じさせてくれる地図だと思います。人間がわざと、山や地形を人為的に作ろうとしたら、こんなにカッコ良くならないんですよ。そしてまた、日本列島がいかにバラエティに富んだ地形を用意してくれてるのかっていうのも、これを見たら改めて感じてもらえると思います。

とにかく地形の細かさを精密に出していますので、「地形のフォルム」っていうのを見ていただきたいですね。アカデミックな見方もいいですが、触った手触り感だとか裏から見たりだとか、色んな形で楽しんでもらえたら嬉しいです。照明を少し暗くしてみても、フォルムの陰影が面白かったりしますよ。

今回、立体地図になっているのは、小説とか映画の舞台になっているところが多いんです。例えばそういう小説を読みながらこれを見ると、これはもう夢中になりますよ。ここの所がこうなってるのか、っていうのがね。お酒でも飲みながらそういう見方をすると、本当に楽しいですよ。

──本日は楽しいお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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