電子辞書メーカーシェアNo.1のカシオとの共同開発によるココチモ・オリジナルモデル。モデルチェンジを重ねて今回の機種が誕生するまでの開発ストーリーを特集でご紹介します。
「お客様」という言葉をひも解き、一人ひとりの姿を思い描く日々。
初代モデルから一貫して電子辞書の開発を担当してきたココチモのバイヤー山口。
バイヤーの山口は、よく「うちのお客様」という表現を使います。"うち"というのは、もちろん"ココチモの……"という意味です。広辞苑で「客」を引くと、「商売で料金を払う側の人」と記されています。なんとも実直な解説ですが、そこに丁寧の"お"と敬意の"様"を加え、さらに"うちの"を付けると、次のような意味になると山口は言います。
山口「良いものを見極める目と旺盛な知的好奇心を持った、私たちにとって大切なココチモのお客様」
そのお客様のことを山口が考えない日はありません。しかし新しい商品開発に取りかかるたび、時としてそのお客様は遠くへ離れ、おぼろげになってしまいます。
思い返せば6年前、新しい商品を探していたあの時もそうでした。なかなか商品のヒントが掴めなかったある日、新商品開発という任務に「うちのお客様」の姿を重ね合わせてみたら、「知的好奇心の旺盛なココチモのお客様が歓ぶ商品は何か考えよ」という声が聞こえてきたのです。
「知的好奇心を満たす?……」「私なら好奇心が湧いたらそれをもっと詳しく知りたくなるなぁ……」「例えば辞書や百科事典で調べたりとか……」「辞書?……百科事典?……」実は山口は学生時代から合唱が趣味。外国語の歌を唄う機会も多く、歌詞の意味を調べるために手を伸ばせばいつもそばにある、山口にとって辞書とはそんな存在でした。最近はインターネットでの検索も便利になってきましたが、内容の信頼性という意味では辞書に勝るものはありません。しかし辞書や百科事典は種類を揃えるとなると費用がかさみます。その瞬間、「そうだ、電子辞書があるじゃない!」と山口の脳裏に新商品の姿が浮かびあがったのでした。
カシオとの共同開発で進化してきた、ココチモの電子辞書。
2011年1月、山口は電子辞書のトップメーカーであるカシオさんへ一通のメールを送りました。「ぜひご相談申し上げたい事があるのですが……」と。数社ある電子辞書メーカーの中からカシオさんを選んだ理由。それは当時、カシオさんの電子辞書『エクスワード』が販売台数1位という記録を更新中で、製品へ対する安心感があったから。しかしそれとは別に、山口をひきつけた理由がもうひとつありました。
山口「エクスワードは、電源を切ると画面が消える前に、その画面下に"知る、聞く、学ぶに、歓びを"って表示されるんです。この言葉が、まさに私が探していたイメージにぴったりだったんです」
お客様へ対して「同じ想いを共有できるカシオさんとなら、必ずいい商品を開発できる」というこの直観に従って、オリジナル電子辞書の開発はスタートしたのでした。
2012年に初代を発売。その1年後には、ココチモだけのオリジナルコンテンツである『抒情カラオケ名曲集15選』と、『昭和史年表一億人の軌跡』を収録した2代目が登場。さらに操作性を向上させた2014年発売の3代目へと進化させてきたのです。
そして今年も、勉強熱心なココチモのお客様へ向けた新しい電子辞書を開発する時期がやってきました。ところがここに、これまでとは違う山口の悩みがありました。電子辞書の操作性や機能性はカシオさんが進化させてくれるとして、ココチモのオリジナル性をどう進化させるか? すでに100種類の辞書が収録されており、これ以上何が不足しているというのか? その解決の糸口をつかめないまま、山口は年末の多忙な時期を過ごしていました。
「辞書の王様=広辞苑」にも、検索できない言葉はある。
オリジナリティーを求めて、幾度となく繰り返されたココチモとカシオさんとの開発会議。この日のメンバーは、カシオのコンシューマ推進室の松本さん(左手前)、第一企画室の神長さん(左奥)、東京営業部の山辺さん(中央)と、ココチモの責任者:手島(右奥)とバイヤーの山口(右)。 ※役職等は取材当時のものです。
年末といえば、毎年恒例の『ユーキャン新語・流行語大賞』の発表があります。『ユーキャン新語・流行語大賞』とは、その1年間に発生した様々な「ことば」のなかで、多くの人の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選び、その「ことば」に深くかかわった人や団体を表彰するものです。"ココチモ"はユーキャンの通信販売事業部門ですから、山口もその発表の場に参加していました。
2014年のノミネートは、映画「L♡DK」で話題となった『壁ドン』や、女性お笑いコンビ・日本エレキテル連合のギャグ『ダメよ~ダメダメ』のほか、『集団的自衛権』や『マタハラ』(マタニティ・ハラスメント)など。しかし話題になった新語・流行語とはいえ、世代やジャンルの関心度によっては、耳にしたことがない人、正しい意味を知らない人も少なくありません。また、こうした新しいことばを電子辞書で検索することはできず、唯一調べることができるのが、『現代用語の基礎知識』という本でした。
山口「そうだ! 今度の電子辞書に『現代用語の基礎知識』を収録しよう。それが完成すれば、古語から新語まで調べられるココチモだけの特別な電子辞書になる!」
『現代用語の基礎知識』の発行元はユーキャンの系列出版社。上司の許可を得た山口は、早速開発を担当してくださるカシオの(第1)企画室・神長さん、コンシューマ推進部の松本さん、営業部の山辺さんとの打ち合わせをスタートさせたのでした。
「山口さんから『現代用語の基礎知識』の件をお聞きした時、その情報量の多さはもちろんですが、それを正しく作動させるためのチェック作業は、かなりの労力が必要になるだろうというのが第一印象でした」
神長さんの言う情報量の多さとは、『現代用語の基礎知識2015年版』の1480ページという量のことです。しかも、「例えばジャンプサーチという機能があります。これは調べた解説文の中にさらに意味を知りたい単語が出てきた場合、電子辞書に収録している他の辞書へジャンプして、その意味を調べることができるという機能です。こうした機能を正しく表示させて初めて、電子辞書は完成するのです」という説明で、4代目開発の大変さがひしひしと山口にも伝わってきたのでした。
オリジナリティーを求めて、幾度となく繰り返されたココチモとカシオさんとの開発会議。この日のメンバーは、カシオのコンシューマ推進室の松本さん(左手前)、第一企画室の神長さん(左奥)、東京営業部の山辺さん(中央)と、ココチモの責任者:手島(右奥)とバイヤーの山口(右)。
進化してきたココチモ・オリジナルの電子辞書。
度重なる打ち合わせを重ねた8月のある日、ついに山口の目の前に試作品の電子辞書が姿を現しました。希望したシャンパンゴールドの色合いもいい具合です。
そこで早速、現代用語の基礎知識でその日の朝のニュースで話題になった時事用語を検索してみました。するとスムーズにその解説画面が現れました。
次にその解説文の中の調べてみたいことばを選んでジャンプ機能を使うと、見事にその解説へとジャンプ! その途端会議室に「おお~っ!」という歓声があがりました。
4代目の電子辞書では辞書・事典(コンテンツ)を130種類収録。広辞苑を始めとする国語系辞書が13種類、英語系辞書が3種類、英会話・トラベル系が41種類収められているほか、『もういちど読む山川日本史』を含む歴史・教養系が12種類、植物や野鳥などの図鑑に、薬の手引き、病院の検査がわかる手引きなどの生活・実用系が56種類と、ここでその全てを紹介するのは困難なほどの充実した内容となりました。
4代目(2015年)
『現代用語の基礎知識』を追加収録。新語・流行語も検索可能に。
そして2016年。もう情報量も性能も充分すぎるほどになった電子辞書。次モデルの開発に取りかかった山口はここで「操作性」について突き詰めて考えます。4代目までの電子辞書は業界標準のローマ字入力方式で、パソコンと同じアルファベットのキーボード配列でした。
山口「ココチモのお客様には、キーボードは右から「あいうえお」順に『ひらがな』で並べた方が使いやすいのでは?!」
ローマ字配列(従来)
あいうえお順
社内でもそのアイデアは即採用、これもまたカシオの協力で製品化の運びとなりました。そして今春より発売したところ、この「あいうえお順」キーボードがココチモのお客様に大好評、歴代モデルを超えるヒットを記録しています。
カシオさんの協力を得て、ここにようやく山口が思い描いた電子辞書が完成しました。それは山口が言うとおり「知的好奇心旺盛なうちのお客様のために開発した、ココチモだけの電子辞書」となったのです。
※最新の「カシオ電子辞書」の商品ページにリンクします。
※記事の内容、写真は取材当時(2015年)のものです。